【閑話休題】読書感想文: 「創薬が危ない」 を読んで

 

慶應義塾大学薬学部の水島徹教授の著書である。2015年2月に出版された本である。このブログを読んでいただいている人に強く読んでいただきたいと感じたのでブログを更新する。

 

内容はできる限り優しい言葉で記述してある。時折見られる水島教授のジョークにもクスっとくる(笑)。記載されている実験手法や実験機器などは、私もなじみ深いモノだが、素晴らしく丁寧に解説されていて感動した。

 

今の日本人で、薬の恩恵に預かっていない人などいないと思う。それだけ重要なモノであるにも関わらず、その作用機序について詳しく知っている人などそうそういないのでは無いか。色々なものに興味を持つのは大事な事だし、自分の体を治す薬について興味を持つのは重要な事だろうと思った。

 

「高校生に創薬研究者を目指してほしい」という思いで書かれた本とのことだが、後書きによれば、「既に創薬の現場にいる人」も対象としているとのことであった。どおりで盛りだくさんの内容であるわけだ。正直、「これを高校生に読ませるのかよ!」と思った瞬間もある(笑)。水島教授の思いが高校生に伝わればいいな、と心から思う。私も昔は創薬の研究者になりたかったが、能力が足りなかった。一応、医療系企業で研究職をしてはいるものの。

 

水島徹教授は、アステラス製薬の研究員を経てからアカデミアに戻られ、現職に至る。製薬企業と大学、両方の立場を経験している超有名人だ。今でもLTTバイオファーマの取締役会長である。そんな方が書かれた本が面白くない訳がない。

 

ちなみに私は、上場廃止になったLTTバイオファーマの株をほんの少しだけ保有している。色々と思い入れがあったので、この本を見つけた時、迷わず購入した。

 

表紙を見ればわかると思うが、「早く・安く・安全な薬を届けるドラッグリポジショニングのすすめ」と書いてある。ドラッグリポジショニングの実例や現状について、詳細に書かれている。ちなみに、ドラッグリポジショニングについては、過去にこんなblogも書いていた。

【閑話休題】「ドラッグリポジショニング」で凄いニュース!アルツハイマー病の臨床治験

このブログで書いた内容が、この本に詳しく書いてある。
 

ドラッグリポジショニングという言葉にピンとくる人は多いと思う。 みんな大好き「そーせい」の望月副社長のインタビュー記事のリンクも張っておこうと思う。

そーせいグループの望月副社長に聞く、「ドラッグリポジショニングでは製剤化が重要」

 

 

 

 

だいぶ前書きが長くなったが、このブログを読んでいる方に是非読んでいただきたいと考えた理由を次に述べる。創薬の開発ステップや、開発のリスク、大学の役目、大手製薬企業の考え方、バイオベンチャーの存在意義。そういったものを改めて学ぶのに大変良い本だと思った。また、創薬の難しさや開発のリスクなどについては、知らない話が多くてとても勉強になった。

 

創薬研究はあらゆるところにリスクが潜んでいると言うことを知った上でバイオベンチャー株を買うべきであろうと思うのである。年間何千億円も売れていた薬が、一転して、健康被害を起こし、大型訴訟になってしまう話など、知っていて損は無い話である。

 

完全に余計なお世話だが、「そーせい」のアルツハイマーのパイプラインや、シーブリ・ウルティブロの強烈なライバルになり得る研究内容が本書には記載されているかも・・・。

 

 

 

 

今までブルーバックスシリーズにはあまり縁が無かった。評判が良いのは知っていたが。最近は割と読書することが出来ているので続けていきたい。それではまた次の更新で。

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